永井地区まちづくりの会とは
永井地区は上永井・中永井・下永井の3つの自治会で構成され、永井地区全体で約3,398世帯、8,221人(H27.6現在)が生活する地域です。それぞれの自治会では、運動会やお祭りといった各種の地域活動が行われています。しかし、各自治会で地域全体に共通の課題に対して取り組むということはありませんでした。
こうした中、平成18年度に都市計画マスタープラン「飯岡地域・まちづくりワークショップ」に参加し、「自分たちの町を自分たちの手で、安心・安全で住み良いまちを創造すること」が必要であるという思いから、有志が集い「永井地区まちづくりの会」(以下、まちづくりの会)を発足し、3つの町内会が垣根を越えて連携しながら、住民主体の視点で課題への取組みを始めました。
会の構成メンバーは、上・中・下永井の3町内会役員と有志の地域住民で、現在〇名が会員として登録されています。この他に、地元選出市議や地域の小学校長、同校PTA会長、子供会、盛岡市都市計画課職員等に加え、NPOがアドバイザーとして参加しています。
会が発足してからは、毎月の定例会で1か月ごとの活動報告や活動予定を確認するほか、どの時々のテーマについて話し合いやワークショップを行うなど、定例会の開催は令和5年6月現在で202回に及んでいます。
また、発足当初は、道路整備や信号機の増設など、設備等ハードの要望が主で、行政頼みの姿勢が強く、思うように課題の解決が進まない状況にありました。その後、盛岡市にまちづくりアドバイザー制度の活用を勧められ、アドバイザーとしてNPOに参画してもらうこととなりました。NPOが参画後、定例会における各種アドバイスはもちろん、課題の抽出や解決手法を検討するワークショップの実施のほか、各種補助金や助成金の活用も進みました。
現在、自分たちの活動による成果を感じている中で主体性を発揮し始め、課題解決のための調査や交渉など、自分たちができるソフト面での活動を行うようになりました。加えて、地域の魅力である様々な資源を活用し、地域に対する住民の理解の促進を図るべきとする意見も多く出され、永井小学校との連携により、活動で作成したお宝マップ等が、総合学習で教材として使用されるに至っております。
■まちづくり活動の変遷
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18年度には、地区内の魅力と課題を明らかにするため地域およそ3000世帯に全戸配布の「住民アンケート」を実施、この結果を参考に平成19年度に「お宝・課題問題発見ウォーキング」を行い、約100件のお宝・課題をまとめる。
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岩手県の「元気なコミュニティ100選」に選定され、知事の訪問による「県政懇談会」が開催される。
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平成20年度からは、下水道施設管理課と協働し、地域内を流れる農業用水路の一部区間を住民が草刈り、清掃等の管理をする「アドプト・プログラム」に取組む。
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同年、市民活動推進課の公募型協働推進事業に選定され、「安全・安心な道づくりのためのワークショップ」により地域課題の改善策を検討し、住民による交通量調査の結果とともに関係機関への協力要請を行い、「横断歩道」と「信号機」等の設置が実現。
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平成21年度、永井地区まちづくりの会を主体にNPOや都市計画課職員からなる地域協議会が「農山漁村(ふるさと)地域力発掘支援モデル事業」(農水省)に認定され「水辺と花の里」「情報文化」「歴史・伝統文化」のテーマ毎のプロジェクトを立ち上げる。
■プロジェクトチームによる活動
・「水辺の里と花」(継続中)
平成22年度に農業用水路鴨助堰の「草刈とごみ清掃」による維持管理や鹿妻穴堰土地改良区とのアドプト協定事業として、「鴨助堰の清掃活動」と「河川愛護の看板設置」をおこなっています。また、平成23年度には全労災地域貢献助成事業の支援を受け、鴨助堰の護岸に「花の植栽」を行っており、現在も活動を継続中です。
・「歴史・伝統文化」班(永井地区さんさ踊り 継続中)
地元に伝わる「伝統さんさ踊りの保存・継承」などの取組み、指導者の調査を実施。その結果、以前にはさんさ踊りは上・中・下永井それぞれで盛んに踊られていましたが、組織的伝承がされず、ごく一部の地区で踊られているだけであることが分かりました。何とかして伝統芸能として地域に保存するため、唯一さんさ踊りを知っている長老の方の協力で、笛・太鼓の譜面起こしや踊りの記録をしながら、20回を超える練習会を行いました。
練習の成果は、多賀神社例大祭宵宮、介護施設慰問、永井小学校全校集会、および東日本大震災被災地などで披露するまでになり、最近では永井小学校の修学旅行の訪問先でも披露するようになりました。祭りや芸能の特色ともいえる、小学生から80代までの幅広い世代の交流は、伝統を繋ぐという意味にとどまらず、「人と人とを繋ぐ」という、まちづくりの根本を形成する重要なものとして認識しています。
・岩手飯岡駅を中心としたまちづくり(継続中)
岩手飯岡駅ロータリー班は、子供会や老人クラブなどの協力でチューリップや芝桜を植え、草取り、水やりなどの管理をし、駅利用者の一時の憩いの場となっています。
キショウブ班は、お宝さがしの際、岩手飯岡駅路線沿いの堀で雑草の中に僅かなキショウブを見つけた。草取りや移植そして案内板も設置し、今では毎年6月にきれいな花で道行く人の目を楽しませています。
なお、財団法人区画整理促進機構が行う街なか再生助成事業にも採択され、地域へのアンケートやワークショップ、先進地駅周辺の見学会などを実施し、検討結果を報告書にまとめ、駅を中心としたまちづくりの在り方を提言しました。
・情報発信「まちづくり情報紙 ながい」「かわら版」(継続中)
会の活動の目的や様子、地区のまちづくりの情報をまとめた「情報紙ながい」(A3版両面
2つ折、不定期年1~2回発行)の発行はこれまでに30回以上に上り、全戸(約3,000部)
に配布しています。また、情報紙がダイジェストであるのに対し、かわら版(毎月1回発
行)は毎月1回開催されるまちづくりの会の内容をまとめたもので、会でどのような議論や
活動が行われているのかをお知らせしています。
■これまでの事業実績
まちづくりや伝統芸能をテーマにした各種助成金を活用し、活動の原資の一部としてきました。
・公募型協働推進事業(盛岡市)、地域貢献助成金(全労災)、まちなか再生助成金(街なか再生全国支援センター)、住まいとコミュニティづくり活動助成金、税理士共栄会文化財団助成金、地方創生に向けがんばる地域応援事業
■結びに
高度情報化、少子高齢化が急速に加速する社会を迎え、行政予算の縮小、これに伴い地域の役割が重要になっており、今後ますますこの傾向は強くなっていくことは明らかです。行政に依存する従来の在り方ではなく、地域住民自らが汗を流し、「誰かが自分たちのために何をしてくれるか」ではなく、「自分たちが地域のために何ができるか」を考え、実践し、「住んで良かった」と思えるよう、引き続き取組んでいきます。
各種活動を通して、希薄になりがちな住民間の連帯意識の向上を図り、更には他の地域との連携をとりながら、「まちづくり」を次の世代に伝えていきたいと考えています。